日本盲教育史研究会

掲載:2016年07月24日

最終更新:2016年07月24日

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「第4回ミニ研修会 in 九州」開催のご報告

予想を超える盛況となった第4回ミニ研 in 九州

日本盲教育史研究会副会長 吉松政春

 九州北部が梅雨入りした6月4日(土曜日)、福岡県北九州市で第4回ミニ研修会 in 九州を開催しました。これまでのミニ研とは異なり、盲教育とゆかりのある施設等のフィールドワークはせずに、講演と報告・発表で構成しました。

 メインの講演は「日本盲教育史研究の成果と課題―1920年代における川本宇之介と希望社運動の検討―」と題した長崎大学の平田勝政教授によるものです。川本宇之介は、口話教育の推進で有名な人物であり、聾教育の世界では知らぬ人はいないようです。実は私はあまりこの川本については知識がなく、今回の平田先生の講演の中で、帝国盲教育会の初代会長であったことを知りました。現在の全日盲研に続く歴史ある研究会です。

 川本は、東京市や文部省に勤務する中で、貧困児童や障害児童の不就学問題に対して心を動かされ、その解決に身を乗り出していきます。また、盲学校及聾唖学校令の草案作成の任に当たり、東京聾唖学校と東京盲学校の教諭に任命され、盲・聾唖教育の教員養成と教育実践の革新にも取り組んでいます。

 川本の業績の1つは「特殊教育」の義務化を制度化させたことです。学校教育法の「特殊教育」(現「特別支援教育」)の規定は、川本の功績が大きく関わっています。

 そして何よりも、川本が昭和初期に発表した「盲教育革新論」という考えの中で、現在も盲学校の課題とされている教育内容の改善、校舎や体育館、寄宿舎の整備といったものを指摘していたことも知らされました。これらの課題がおよそ100年の年月を経ても完全には解決されていないことに悲しいものを感じるとともに、先人の偉大さと、この盲教育史研究会の存在意義を感じました。

 平田先生の講演のもう1つのテーマは、後藤静香(ごとう せいこう)が中心となった希望社運動です。日本点字図書館の支援者としても知られる彼が推進したこの運動は、全国に広がりその後、盲人の問題にも関わっていきました。盲人の生活向上の一翼となり、希望社盲人連盟という当事者運動にもつながっていきました。その一方、希望社が進めた癩病根絶」運動が隔離の一つの原因にもなったという発表にも考えさせられるものがありました。

 続いて、報告が3本です。

 まずは、長崎県立諫早特別支援学校の菅達也氏の「明治期盲唖学校と支援組織〜九州地方を中心に〜」です。地元柳河盲学校を維持するための支援組織がしっかりしていたことを知らされました。

 次に、地元北九州市出身の木下知威氏(日本社会事業大学)の「九州と盲唖教育」も非常に精緻な研究であり、九州における盲・聾教育の草創期の特長を多面的にとらえたものでした。障害当事者や外国人等多様な人々が九州の盲・聾学校に関わっていたことが報告されました。

 3つ目は、佐々木順二氏(九州ルーテル学院大学)による「地方盲学校、聾学校の専門的教員の養成と補充―昭和初期から昭和30年代の熊本県―」です。教員免許という視点から、当時の盲・聾学校の課題を研究したものです。教員免許があればそれで十分なのかということは今でもよく言われますが、臨時教員養成が各地で行われていたことにも今に通じる課題を感じました。

 その後、資料紹介という形でこの会の役員でもある私と岸事務局長から二つの発表を行いました。

 私の「福岡県の盲学校について」というのは、盲学校卒業生の一人として、またそこに勤務した職員としてこれまでに知り得たことを紹介しました。作詞:北原白秋、作曲:山田耕筰の柳河盲学校の校歌のこと、自分の死後、遺骨を教材として残した福岡の河辺藤助先生と柳河の式寅次郎先生のこと等、多くの方がこの分野に興味を持っていただけることを願っての発表です。

 岸事務局長の「九州と京都盲唖院」という発表は、日本最初の盲学校である京都盲唖院が九州各県の盲学校と深い関わりがあったことを紹介されました。九州初の盲学校である長崎盲学校の創立に関わった人達が京都で学んだという事実がその影響の大きさを物語っています。

 最後に全体をとおした意見交換の時間をとりました。教員免許と現場との関係、九州における新しい文化の玄関口であった長崎という土地と盲唖教育のこと、希望社と聴覚障害のこと等、幅広い視点からの意見が出されました。

 今回のミニ研は、本会の会員が九州ではまだ少なく、その拡大も大きな目的の1つでした。しかし、開会を決定した後に熊本地震という大きな災害が九州を襲い、一時は延期・中止も考えました。そのような状況の中で開催したにも関わらず、60名もの人達に参加していただき、皆さんに大成功だったと言われたことが何よりもうれしいことでした。これを機に、九州での研究に勢いがつき、盲教育史研究会全体の発展にもつながればと思います。会場で熊本地震支援のための募金箱を置かせてもらい、4,666円の浄財が集まりました。参加された方々の熱意とともに、心やさしさに元気をいただきました。

 当初九州で開催を打診された時の不安感が今となっては懐かしく思い出されます。

本文ここまでです。

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英語:Japan Society on the History of Blind Education

エスペラント:Japana Societo pri la Historio de Blindul-Edukado(ヤパーナ ソツィエート プリ ラ ヒストリーオ デ ブリンドゥール・エドゥカード)

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